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「日本・オーストリア国交のはじまり」明治期の港区域

2019.11.21

ただいま開催中の特別展、日墺修好150周年記念「日本・オーストリア国交のはじまり -写真家が見た明治初期日本の姿-」から、展示のおすすめポイントをご紹介いたします。
本展では、明治初期の日本を写したオーストリア人写真家、ヴィルヘルム・ブルガー(1844-1920)とミヒャエル・モーザー(1853-1912)が撮影・収集した、写真のコレクションを中心に展示しています。

150年近く、ガラス原板ネガとして保管されていた、彼らや同時代の写真家が撮影した写真作品。
幕末・明治初期の日本の姿が詰まったそのネガを、高精細デジタルカメラで透過光撮影、ポジ画像に反転することで、細部まで鮮明に写された風景が現代によみがえりました。
本展では、その画像を大きく引き延ばして展示中。
大きなパネルの横には、元の原板サイズの画像も並べてあります。

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※展示室内での写真撮影はできませんので、あらかじめご了承ください。

明治初期の港区域の様子を高画質の大画面でご覧いただけるので、細かなところまで見どころがたくさんありますよ。
今回はその中からほんの少し、ご紹介したいと思います。

『愛宕山から築地方面を望む』〈明治4~5(1871~72)年頃〉
個人蔵〔カンマーホフ博物館寄託〕
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こちらは、モーザーが愛宕山の頂上から撮影した写真。
手前に映っているのは大名屋敷です。
明治4(1871)年の廃藩置県を経て、一部の屋根はばらばらと荒れ模様...退廃的な様子が印象的ですね。
その片隅には、ひっそりと干された洗濯物も見えます。
ぜひ展示室のパネルから探してみてくださいね。

一方、よく見ると遠方の中ほどには築地本願寺、同じく遠方右端には築地ホテル館が見えます。

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実はこのどちらも、明治5(1872)年2月に銀座大火と呼ばれる大火災で焼失してしまった建造物。
写真はその直前に撮影された可能性が高く、貴重な眺望を写し取ったものであることが分かります。

『芝切通』〈明治5(1872)年頃〉
個人蔵〔カンマーホフ博物館寄託〕
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こちらの写真、細部をよく見ると「西久保廣町」という町名札が読み取れることから、撮影場所が判明しました。
中央付近で、人力車の車夫さんが上り勾配へ向かって足を踏み出している姿が勇ましいですね。
その後ろの小屋には「易人相」の文字。
どうやら占いをしているようです。

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展示室の大きなパネルでは、板葺き屋根をおさえる置き石の1つ1つまでもがよく見えますよ。

これらの写真は、日本とオーストリアとのつながりのみならず、当時の撮影技術と現代のデジタル技術とのつながりの結晶ともいえます。
そして展示室にお越しの際は、背景の壁色にも注目!
実は、白黒写真が良く映えるように考えられた、こだわりの色なのです。
皆様もぜひ展示室で、写真の中の世界をじっくり覗いてみてくださいね。

日墺修好150周年記念「日本・オーストリア国交のはじまり -写真家が見た明治初期日本の姿-」は12月15日(日)まで開催中です。
皆様のご来館をお待ちしております。