法然上人伝絵詞(紙本着色)
- 所在地
- 芝公園4‐9‐8
- 所有者
- 宗教法人妙定院
- 概要
- 9巻 絵画 昭和60.10.15指定
- 法量
- 縦 各32.5cm、横 巻一738.6cm 巻二1161.5cm 巻三1446.9cm 巻四831.7cm 巻五1061.2cm 巻六1149.2cm 巻七1368.4cm 巻八1084.8cm 巻九1035.7cm
- 公開状況
- 非公開
- 写真タイトル
- 巻四 清水寺説法の図
浄土宗の祖である法然上人の生涯における行状を図絵した絵巻物には、伝法絵(『法然上人伝法絵流通』4巻)、増上寺本(『法然上人伝』2巻)、琳阿本(『法然上人伝絵詞』9巻)、『拾遺古徳伝絵』9巻、弘願本(『法然聖人絵』4巻)、四十八巻伝(『法然上人行状絵図』48巻)などの伝存することが知られています。このうち、妙定院に伝えられる1本は「琳阿本」と称されるものです。9巻より成るこの絵巻の巻第二、第三、第四、第七、第八、第九の巻頭および巻第二の巻末にはそれぞれ「向福寺琳阿弥陀仏」ないしは「向福寺琳阿」(巻第七のみ)の書入れがあり、かつて向福寺の琳阿弥陀仏なる浄土教信者が所持していたことを示しています。原本はすでになく、琳阿本の系統を継ぐものとして、現在、残欠本を含めて3本の存在が知られていますが、中でも妙定院蔵本は、9巻にわたる詞と絵のほとんどを完備する江戸時代前期における良質な摸本です。図の描写手法から、狩野派の画法を学んだ画家の手になるものと思われ、人物の表現を中心に所々に古様を留めるその描法には、転写に臨んでの筆写の忠実的確な描写態度が示され、原本の姿を正しく捉えていることがわかります。
この絵巻の祖本は、当初、聖光の系統を引く鎮西派が教団内の他の法系に対し自己の正統性を主張することを目的として制作されたと解され、宗教史上きわめて重要な意味を持つものです。また一方で、美術史上においても、高僧絵伝の重要なテーマとして近世に至るまで描き続けられた法然絵伝の貴重な資料を提供しています。