漆喰造彩色天野屋利兵衛像 入江長八作
- 所在地
- 高輪2‐11‐1
- 所有者
- 宗教法人泉岳寺
- 概要
- 1躯 彫刻 平成16.10.26指定
- 法量
- 像高43.5cm
紋付・袴を着けて端座する天野屋利兵衛像です。『忠臣蔵』十段目に天河屋義平として登場し、由良之助を助ける大坂の商人で、浄瑠璃・講談でも有名ですが、実在の人物ではありません。また、江戸時代にはたくさんの錦絵も描かれました。本像は錦絵等に表現される着流しの姿ではなく、左腰に刀(亡失)を帯びた姿に表わされています。
像の底部に「庚辰仲秋秋八月 巧者天祐居士」とあり、明治13年(1880)、入江長八(1815-89)によってつくられたことがわかります。長八は「伊豆の長八」と称された名左官で、鏝絵〈こてえ〉(漆喰壁・土塀や額装のものなどに、鏝を使って七福神をはじめさまざまな図様を浮彫り風に描いたもの)ばかりでなく、不動・恵比寿・大黒などといった置物も作っています。本像は長八数え66歳の作で、置物の域を超えた彫像作品といえます。目には玉眼を入れ、眉根を寄せた顔貌や着衣の表現には細かい神経を働かせています。また、黒く塗られた像底部には、先に見た銘文とともに、足を重ねた白足袋が表現され、見えないところにまで意を配った長八の心意気がうかがえます。
伊豆松崎町には長八記念館がありますが、本像は都内に残る数少ない長八作品として貴重です。