承教寺梵鐘
- 所在地
- 高輪2-8-2
- 所有者
- 宗教法人承教寺
- 概要
- 1口 工芸品 平成30年9月25日指定
- 法量
- 総高157.6cm 口径86.0cm
- 公開状況
- 公開
鐘身は乳の間から下方に向けて穏やかに膨らむ円筒形を呈し、ごくわずかに裾が開いて駒の爪に連なります。笠形は丈高で上面中央に龍頭を据えます。龍頭は二頭の龍が背中合わせに相反する形で、背には蓮台に載せた火焔宝珠を置きます。縦帯と中帯が交わる位置2カ所複弁八葉蓮華文の撞座を設けます。下帯の縦帯の下方部4カ所に蓮華と蕨手の組み合わせ文を陽鋳します。
本梵鐘を鋳造した矢部豊前掾重正は江戸時代中期に活躍した江戸の鋳物師で、神田鍛冶町一丁目に住しました。元禄2年(1689)から正徳元年(1711)にかけて、本梵鐘を含めて8例が知られています(銅鐘7例〔推定を含む〕、擬宝珠1例)。なかでも元禄2年の年号を有する本梵鐘は重正の最初期の遺例です。重正の作例は江戸を中心に岩手県、千葉県、神奈川県などに及んでおり、鋳物師としての力量を推し量ることができ貴重で、鐘楼とともに江戸時代の姿を今に伝える貴重な文化財です。
本梵鐘は太平洋戦争のために国に供出されましたが、その後返還されました。鐘身の内側面2カ所に、供出時に刻まれた「芝二本榎一丁目/承教寺」の文字が残っています。